八月の食-精進料理

【八月の食-精進料理】

東京や一部地域では7月13~16日にお盆を迎えますが、一般的に「お盆休み」と呼ばれる時期は8月13~16日をさします。時期や風習などは地域によって異なりつつも、お盆はご先祖様の精霊が家に戻ってくる時期、そしてそのときには精進料理をお供えします。

ところで、もともと精進料理は仏教の修行をする人が食べる料理のこと。肉や魚などを使わず、野菜、大豆、海藻など、植物性の食材だけを使った料理です。そして、だしもかつお節やにぼしなどを使わず、昆布やしいたけを使います。

また本来、精進料理の調理法は、五味(味覚の「甘・酢・鹹(かん)・辛・苦」)、五色(見た目の「赤・青・黄・黒・白」色)、五法(調理法の「煮る、焼く、蒸す、揚げる、生食」)となっており、素材を余すことなく使った上で、味や見た目の美しさの調和も大切となります。

精進料理は仏教の伝来とともに伝えられ、鎌倉時代以降の禅宗によって発達します。永平寺式の精進料理は、室町時代から江戸時代前期に普及した本膳料理に通じ、懐石料理は精進料理から派生したものです。このように精進料理は日本の食文化の基盤となり、日本料理に影響していきました。

先祖の霊を迎え、供養をする期間であるお盆。13日の夕方に先祖の霊を自宅に迎え、16日の朝に送り火を焚いたり、精霊流しをしてお見送りをしますが、先祖の霊が自宅に泊まるとされる14日、15日は家族と同じ食事をお供えします。

ご先祖様にお供えるご飯を「霊供膳」「ご霊膳」などといいますが、そのお膳で使うお椀の種類と中身は以下のようになっています。

飯碗:ご飯

汁椀:お吸い物・お味噌汁

高皿(猪口):漬物

平椀(平皿):煮物

壺椀:煮物・和えもの(胡麻和え)・お浸し・酢の物など

また、キュウリやナスに楊枝や割り箸をさして作る精霊馬(しょうりょううま)は、「精霊が馬に乗り、牛には荷物をのせて、楽に帰れるように」という意味が込められています。キュウリは馬の例えで、お盆のときに少しでも早く迎えられるようにとの願いを表現し、ナスは牛を表現し、お盆が終って帰るときは、ゆっくりとのんびりとの願いも込められています。

また彩りの綺麗な夏野菜の天ぷらである精進揚げや、喉越しのいい素麺、浄土へのおみやげの団子、餅米を炒って粉にしたものを木型に詰めて抜く型菓子など、お盆ならではの食もまた楽しいものですね。

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